PENTAX KPで撮る「美山かやぶきの里」

 

  

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 昨年6月初頭に訪れた、京都府南丹市美山町の集落「美山かやぶきの里」。

初めは「2017年を振り返る」という感じの企画で他の写真と一緒に載せようと思っていたのですが、実際にチェックしてみるとおかだんごが写っている写真ばかりでブログに掲載できるものが殆どないという事実が判明し、それなら実写レビュー風に「KPで撮る美山」という形で纏めてみよう、ということで今回の記事を執筆するに至りました。

掲載している写真はすべてPENTAX KPとFA50mmF1.4+DA70mm Limitedフードの組み合わせで撮影したもので、現像はPENTAX純正のDigitalCameraUtility5*1にて行なっています。このため、ボディ内現像(撮って出しJPEG)を重視される方は撮影結果の可能性の一つとしてご覧下さい。

また、画像サイズは全て長辺800pixのため、閲覧環境により拡大機能でぼやけて表示される場合がありますのでご注意下さい。

 

 

  

緑薫る、初夏の美山。

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駐車場のすぐ脇を流れる由良川は源流にほど近く、解禁を迎えた鮎釣りが盛んに行われています。

初夏の気持ち良い風に吹かれ、絶好の観光日和のなか、まずはコレ!ということで美山牛乳ソフト。

日差しに輝く純白のソフトクリームは敢えて白飛びのまま現像していますが、RAWではきちんと階調が残っていて驚きました。

表面照射センサーかつISOベース感度(基準感度)100、さらには14bit RAWのお陰か、さすがのダイナミックレンジです。

 

  

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大空にすらっと伸びる細身の竹。破竹でしょうか。

穂に繋がれた吹流しは「この時期にはコレ」という風習なのか、無教養ゆえの観光し甲斐のなさが顔を出す瞬間です。

レンズは対逆光性もよく、撮って出しでは雲の周りにこんなにフレアはありませんが、「肉眼で見た時の印象に近い、逆光の程よいまぶしさ」を再現するため、現像時にハイライト側を持ち上げて太陽の存在を感じられるよう調整しています。

繊細な穂を彩るパープルフリンジは好みの分かれるところ。私は「自分の目の見え方に近く、かつガラス玉越しに見た世界」という感じが出るレンズが好きなので、あまりに主張が強い場合以外は手を加えず、ボディ内除去機能もオフにしています。

フリンジは肉眼であっても注意深く観察すれば見えますし、原則的にはむしろ「ない方が不自然」な訳ですが、写真というメディアは非常に意識的なものであるため、往往にして主張し、意味を持ち過ぎてしまいます。

芸術的な観点・演出として「あった方が良い」という判断がない限りは、やっぱり邪魔者なんでしょうね。

 

 

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集落のアイコンである丸型ポスト。一見わざとらしく芝居をさせたように見えますが、偶然その日に出すものがあったようで、ここぞとばかりシャッターを切りました。日差しに輝くクリームパンのような手もこの通り。立体感あふれる描写です。

このレンズはPENTAXの中でもヌケが良く、柔らかな解像と肉眼の印象に近い、非常に自然でリアルなボケが持ち味です。前ボケ、後ボケともに滑らか過ぎずザワつき過ぎず、絶妙な塩梅の描写で一番のお気に入りです。

PENTAXの代名詞であり、常に比較の目が向けられるFA Limitedレンズ(特にFA43、FA31)は繊細さを極めた解像力と個性的なボケ味の対比が画の主軸となるため、同じフィルム時代のレンズであってもかなり趣が違います。

 

 

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一面にびっしり咲いた白い花。銀杯草(ぎんぱいそう)というそうです。

昔ながらの茅葺屋根に物干し台が相まって、どこか胸のすくタイムスリップをしたような気持ちになりました。

写真はデジカメが苦手とする高周波・高コントラストの条件にも関わらず、その時の印象のままに現像することができました。

特に物干し台周辺の描写は脳汁が溢れ出る素晴らしさで、光や空気に立体感が存在するかのような錯覚を覚えます。

 

 

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生い茂る緑のなか、入母屋造りの茅葺屋根に、赤いツツジと青い空。素晴らしいですね。

私の実家も昔は入母屋造りの茅葺屋根(トタン葺き)だったので、未だに家といえばこれが理想形です。お風呂は薪で沸かす五右衛門風呂でしたし、屋根裏には鹿の角なんかが置いてあって。ひとに「歳ごまかしてない?」って言われる鉄板ネタです。

この写真もダイナミックレンジが要求される厳しい条件で、欲を言えば中判が欲しくなりますが、現像でコントラストを追い込むことで全く不足のないレベルに持っていくことができました。やっぱりPENTAXはセンサーチューニングが巧いですね。

レンズも遠近感の描写が素晴らしく、手前にあるものと奥にあるものとの距離感がはっきり分かります。

 

 

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今ではなかなか見ることのない、古い電力計。浅い軒下に設置されているせいか、かなり錆がまわっています。

残念ながらその質感を画素等倍で忠実にトレースする解像力はFA50にはなく、SIGMA DP2に慣れた私は時折不満を感じる所でもありますが、これはAPS-Cで2400万画素というセンサーフォーマットゆえ、高密度な画素ピッチ(3.92μm)がレンズの解像力を上回ることで起きている現象ともいえます。

フルサイズ3600万画素のK-1やAPS-C1600万画素のK-5程度(4.8-4.9μm、面積比約150%)まで画素ピッチが広くなればバランスの良い撮影結果を得ることができるので、思い詰めると「FA50のためにK-1が欲しい!」なんて思ってしまいます。*2

もっとも画面全体の立体感、ボケ感といったバランスを第一に考えた場合、画素あたりの解像度の高さはあまり重要な要素ではないので、あまり気にする必要はないんですけど。これがFoveon病というやつでしょうか。

 

 

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これまた懐かしの脱穀機。昔はうちにもありました。今ではこれが何か分からない人も多いと思います。

私が子どもの頃には既に機械化されていたので、大体の使い方しか分からないのが悔しいところ。

ドラムの見慣れぬ色と使い込まれた質感が自然な現像結果を求めるうえで壁となりましたが、最終的には雰囲気重視でいこう、ということでクドくならない程度にアンダー気味に現像してみました。柔らかい描写のレンズは硬質で乾いた質感の被写体の良さを引き出しづらい面があるので、FA50で作品を撮るような場合は撮り方や現像に工夫が必要かもしれません。

   

 

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もしもの時に備えるのは消火栓、ではなくこちら。放水銃です。

今や美山名物となった一斉放水もこの一家に一丁(?)ずつ備わった放水銃から放たれています。

もし自分の家にこんな物があったら、秘密基地のようでさぞかし嬉しかったろうなぁ。

写真は今回掲載した中で最も絞り開放(F1.4)に近いF2.2。光と戯れているうち、どこまでも蕩けていくかのような描写です。

FA50は絞りをこれ以上開けると解像感が落ち、光の滲みとホヤホヤ感が顕著に出てくるため*3、開放は日中ではあまり使用せず、自主規制のような形でF2.2で止めるようにしています。

逆に夕方や夜間ではその明るさと圧倒的なボケ量を生かしたトロットロの写真が撮れるので、太陽が落ちる頃になると「リミッター解除!」といった感じで楽しめるのもこのレンズの良い所かもしれません。

なんでも完璧を求めるのではなく、少しの不自由と引き換えに得られる楽しさや快感。そういった「遊び」の余地があるものこそ、趣味のカメラには不可欠な要素*4ではないでしょうか。

 

 

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屋根の頂に水平に入っている木材(正しい呼び方がわからない)、折れちゃってますね。

茅葺は葺替え費用が大変高額になるため、観光地といえど、軽度の損傷は撥水性のある限り放っておかれるのだと思います。

うちの実家では葺替えず、茅の上にトタンを被せる形でリフォームし、以後はトタンのみ葺替える形を取っていました。

それも既に20年以上前のことなので、今尚この姿がお目にかかれる、というだけで大変有難いことなのだと思います。

訪れるたび僅かながらお金を落とす、という形でしか貢献できませんが、いつまでもこの姿を留めていて欲しいですね。

 

 

  

PENTAX KPのよりディープな話はこちら▼

 

 ▼同日にSIGMA DP2で撮った写真はこちら▼

現像方針が違うため見た目通りの比較はできませんが、改めてみると結構違いますね。

シーンを問わず自由自在の絵づくりを追求できるKPと、少しクセはあるものの、相変わらず素晴らしい画が撮れるDP2
DPは生半可な覚悟ではその性能を引き出すことのできない、あたかも撮り手を試しているかのようなストイックさがありますが、その余りある魅力は発売から9年の歳月を経た今もなお、趣味カメラ界におけるひとつの最高峰ではないかと思います。

 

 ▼SIGMA DPのディープな話はこちら▼


 

*1:カスタムイメージは最後の1枚(雅)を除き、すべてフラットを選択。出来る限り自然な仕上がりを目指して現像。

*2:画角が76mmから50mmになる?そんな違いは些細なものだ。人はそれを愛と言う。

*3:フィルム全盛期の1991年に発売されたため、現代のデジタル用レンズのように開放からバキバキに解像することはない。

*4:SIGMA DPシリーズも捨て難い魅力があるものの、やはり最高峰の座に輝くのはEPSON R-D1ではないだろうか。